一般に『花伝書』として知られる『風姿花伝』は、亡父観阿弥の遺訓にもとづく世阿弥最初の能芸論書で、能楽の聖典として連綿と読みつがれてきた。室町時代以後日本文学の根本精神を成していた「幽玄」「物真似」の本義を徹底的に論じている点で、堂々たる芸術表現論として今日もなお価値を失わない。